2007年10月8日(月曜日)

【 Special Report 】ヴェネチア映画祭マカロニ特集の全貌

カテゴリー: - honey @ 17時44分22秒

 第64回ヴェネチア国際映画祭においてサブ企画として、8月29日から9月8日までマカロニ・ウエスタンの特集上映「Western all’italiana」が開催された。

 上映されたのは31本。当初、キュレーター役を務めるはずだったクエンティン・タランティーノはマニラ映画祭でオイタが過ぎたために腰痛を発症し、欠席。推薦していたクラウス・キンスキー主演、アントニオ・マルゲリティ監督の『そして神はカインに語った<未>』(1969)は上映不能となり、かわりに工藤栄一監督、若山富三郎主演の『五人の賞金稼ぎ』(69)が上映された。これは若山富三郎主演による東映「賞金稼ぎ」シリーズ一作で、オールバックに口ひげの医者がウエスタンさながらの銃を撃ちまくる時代劇。果たして、この作品が「Western all’italiana」(イタリア製西部劇)と呼べるのかどうか……は、ともかく、映画祭の喧騒とは離れた町場の上映会場はイタリアはもとよりヨーロッパ各地から集まったマカロニファンの熱気で盛り上がった。
 
Tarantino e gli Spaghetti Western
(<腰痛>タランティーノ監督のメッセージ)
 


 
 本邦未公開作は、ティント・ブラス監督の唯一のマカロニ『ヤンキー<未>』、ロバート・ハンダー主演『テキサスの七人<未>』、ロバートウッズ主演『賞金無用、首はもらった<未>』、ヴァン・ヘフリン、クラウス・キンスキー主演の『サム・クーパーの黄金<未>』、ルー・カステル主演『マタロー<未>』の5本。ちなみに、上映は一部はフィルム、大部分はDVD用にリマスターされたビデオ上映だった模様。
 
 同時に映画祭ではマカロニ・ティーチインも行われ、多くのマカロニ人が参加した。参加メンバーは、ジュリアーノ・ジェンマ、フランコ・ネロ、ファビオ・テスティ、トニーノ・ヴァレリィ、ジュリオ・クエスティ、エンツォ・G・カステラッリ、カルロ・リッツァーニ、ティント・ブラス、ルイス・エンリケス・バカロフ、パスクァレ・スクイティエリ、セルジオ・ドナティ、アレッサンドロ・アレッサンドローニなど。また、映画祭では、エンニオ・モリコーネ・オーケストラ、アレッサンドロ・アレッサンドローニによるコンサートも開かれた。
 
マカロニ特集の小冊子
 
マカロニ特集の小冊子。上映全作品の解説つき、全52ページ。
 
Western all’italiana 上映作品一覧

『テキサスの七人<未>』I sette del Texas (Antes llega la muerte) (1964) Joaquin Luis Romero Marchent
『荒野の10万ドル』 100.000 dollari per Ringo (1965) Alberto De Martino
『続・荒野の1ドル銀貨』 Il ritorno di Ringo (1965) Duccio Tessari
『ネブラスカの一匹狼』 Ringo del Nebraska (1965) Mario Bava e Antonio Roman
『荒野の1ドル銀貨』 Un dollaro bucato (1965) Giorgio Ferroni
『続 荒野の用心棒』 Django (1965) Sergio Corbucci
『ガンクレイジー』 The Bounty Killer (1966) Eugenio Martin
『復讐のガンマン』 La resa dei conti (1966) Sergio Sollima
『さすらいのガンマン』 Navajo Joe (1966) Sergio Corbucci
『必殺の用心棒』 Sugar Colt (1966) Franco Giraldi
『帰って来たガンマン』 Un fiume di dollari (1966) Carlo Lizzani
『ヤンキー<未>』 Yankee (1966) Tinto Brass
『二匹の流れ星』 10 000 dollari per un massacro (1967) Romolo Guerrieri
『さすらいのデスペラード』 El Desperado (1967) Franco Rossetti
『拳銃無宿のバラード』 Il tempo degli avvoltoi (1967) Nando Cicero
『オーウェルロックの血戦』 La morte non conta i dollari (1967) Riccardo Freda
『情無用のジャンゴ』 Se sei vivo spara (1967) Giulio Questi
『サム・クーパーの黄金<未>』Ognuno per e(1967) Giorgio Capitani 
『皆殺しのジャンゴ/復讐の機関砲』 Preparati la bara (1967) Ferdinando Baldi
『復讐無頼・狼たちの荒野』 Tepepa (1968) Giulio Petroni
『十字架の長い列』 Una lunga fila di croci (1968) Sergio Garrone
『賞金無用、首はもらった<未>』La taglia e tua l’uomo l’ammazzo io (1969) Edoardo Mulargia
『風来坊/花と夕日とライフルと…』 Lo chiamavano Trinita(1970) Enzo Barboni
『マタロー<未>』 Matalo! (1970) Cesare Canevari
『ガンマン大連合』 Vamos a matar companeros (1970) Sergio Corbucci
『ガンマン無頼/地獄人別帖』 La vendetta e un piatto che si serve freddo (1971) Pasquale Squitieri
『怒りのガンマン/銀山の大虐殺』 Il grande duello (1972) Giancarlo Santi
『荒野のドラゴン』 Il mio nome e Shangai Joe (1973) Mario Caiano
『要塞攻防戦/ダーティ・セブン』 Una ragione per vivere e una per morire (1973) Tonino Valerii
『荒野の処刑』 I quattro dell’apocalisse (1975) Lucio Fulci
『ケオマ・ザ・リベンジャー』 Keoma (1976) Enzo G. Castellari


2007年5月29日(火曜日)

暁の用心棒

カテゴリー: - master @ 23時02分22秒

 ほとんどセリフがないのが幸いしてか、アメリカでスマッシュヒットとなり、続編も作られた「見て楽しむマカロニ」。何があっても決して焦らない飄々とした流れ者の主人公の動きにあわせたのか、ゆったりしたリズムを刻むエレキギターの音色が全編まか不思議なムードを醸しだす。テンポは早くないのに、リズム感があるので楽しめるのだ。
 人影のないメキシコの村へ流れ者がやってくる。この暑いのにポンチョのかわりに毛布を肩に巻いたヒッピースタイル。トニー・アンソニーは背が低いヤサ男。すでに『荒野の用心棒』のパロディみたいだ。まったく名前は名乗らないので、まさに「名無しの男」でもある。
 アメリカ軍からの援助金を受け取りにきたメキシコ政府軍を、盗賊のアギーラ(フランク・ウォルフ)がマシンガンで皆殺しにし、政府軍に化ける。それを見ていた流れ者が、突然、騎兵隊の衣装を着こんで登場、金を山分けにするならアメリカ人の俺が話をまとめてやると持ちかける。取引は成功し、金を見事に奪うが、アギーラは分け前は1ドルコイン一つだと言い渡す。当然、銃撃戦。が、流れ者は一人なのにやたらに強く、次々とアギラの部下が殺られていく。暗闇の中で激しく光る銃の焔が美しい。アギーラはたまらず、部下を引き連れて逃げる。不気味に追跡していく流れ者。
 アギーラに捕まった流れ者は拷問にあうが、アギーラの情婦で賞金つきのならず者でもあるマリアを倒し、さらわれた女を連れて逃げ出す。町へ戻った流れ者は、女に渡された散弾銃で次々とアギラ一味を倒していく。このショットガンを腰だめで撃つスタイルはそれまでのマカロニにはなかった味わいでカッコイイ。ペキンパーも『ゲッタウェイ』でマックィーンにやらせたが、これの影響かも。日本では一足先に二谷英明が『散弾銃の男』(1961年 監督=鈴木清順)なんてのをやっていたけど。
 最後は、散弾銃の流れ者とマシンガンのアギーラが決闘する。アギーラの口癖「俺はどんな男だ?(フェアな男さ)」を流れ者が口にし、フェアな戦いを匂わせておいて、なんのことはない流れ者は先に銃口を開いてあっさりアギーラを撃ち殺すしてしまう。ここは笑い所だ。死んだアギーラの口に1ドル銀貨を挟む流れ者(原題は「歯の間の1ドル」)。井戸から金の入った袋を2つ引き上げると、そこへ騎兵隊が金を取り戻しにくる。流れ者は、動揺もせず賞金首の分として袋を一つもらい、「経費が1ドルかかってる」とうそぶいて去っていく。正義などまるで興味がない、ウサンくさーい賞金稼ぎのアンチ・ヒーローなキャラクターが素晴らしい。
 騎兵隊の指揮官を演じているのは、『荒野のドラゴン』でチェン・リーにやられていたデンマーク人のラース・ブロックだ。


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